コラム|AI経営

AIで利益が出ない理由:効率化止まりの会社と利益が増える会社の差

AIで作業は速くなったのに、なぜ利益は増えないのか。経営が先に決める目的・型・データの3つを、実践の記録から解説する。

執筆:三浦慶介(株式会社グロースドライバー 代表取締役)

AIで利益が出ないのはなぜか

AIで仕事は速くなりました。では、利益は増えたでしょうか。

AIが利益になるまでには、3つの段階があります。

  1. AIで作業時間を減らす(メール・資料・議事録など)
  2. 浮いた時間・人・お金を、利益を生む仕事に回す
  3. 売上や利益の増加として、成果が数字で見える

多くの会社は、1段目で止まっています。業務が減っても人は減らないので、残業代を除けば費用は変わりません。競合も同じだけ速くなるので、売上も単価も変わりません。

データ分析は格段に速くなったのに、報酬も人数も変わらず、忙しくなっただけ。そんな声もよく聞きます。

AIは能力の増幅装置

私は、AIを『能力の増幅装置』だと考えています。成果を出したやり方(型)があれば、AIはそれを何倍にも広げます。型がなければ、ゼロに何を掛けてもゼロのままです。

成果を出すための必須条件は、次の3つだと考えています。

  • 目的と型を決める:何で利益を増やすかを決め、成果が出るやり方を見つける
  • データを整える:判断に使う社内のデータと背景を、AIが読める形にそろえる
  • 型を持つ人が使う:まず経営層とエース人材がAIを使う

ここからは、私が実際に関わった3つの記録です。

実践1:データ基盤から始めた費用の見直し

グロースドライバーとして支援している、BtoBマーケティング支援企業の事例です。

着手したときの状態

広告や販促のデータは、Excelやスプレッドシートなどに散らばっていました。会議で話されるのは広告の獲得単価ばかりで、どんな顧客が利益を生んでいるかは話題になりません。

結果の数字は見ていても、なぜそうなったかは分析できない。申込の約8割は、どこから来たのかが分かりませんでした。毎月の集計だけで2日かかり、データ基盤の見積りは約半年・約1,000万円でした。

最初に決めたこと:何を判断するデータか

最初に決めたのは、基盤の作り方ではなく、経営が答えを知りたい問いです。マーケティング費用のどこに、利益につながらない支出があるのか。この問いに要るデータだけを、先につなぐことにしました。

元データはそのまま残し、分析用に整えたデータを別に作る二段構成にしました。売上・受注・申込といった数字の定義も、一つにそろえています。

作業には、社内の実データを読んで分析まで行うAI(Claude Code)を使い、基盤は2日で構築しました。

毎月の集計は2分で終わるようになり、流入元が分からなかった申込も、チャネル別の投資対効果として見えるようになりました。

違和感:獲得単価だけでは見えないもの

データがつながると、これまで見ていなかったところに、獲得単価が悪くなっている原因がありました。獲得単価の安さだけで判断していると、取引全体で大きな売上を生む顧客と、そうでない顧客の区別がつきません。

打ち手:LTVで投資を決める

顧客調査で顧客の解像度を上げ、LTV(顧客が取引全体で生む売上)を軸に、顧客層を分けて管理するようにしました。投資の判断も、獲得単価の安さから、LTVの高い顧客層を狙えているかに切り替えました。

結果:お金の使い道が変わった

支援開始から2か月で、マーケティング費用を数千万円削減しました。削った費用は、再投資に回しています。

成果は、AIで集計が速くなったことではありません。データをもとに、お金の使い道を変えたことです。AI活用の3段階でいえば、2段目と3段目まで進んだことになります。

やってみて分かったこと

これほど短期間で作れたのは、AIが優秀だったからだけではありません。何を判断するデータかが先に決まっていたので、つなぐデータを絞れました。

元データがすでにファイルやシステムにあったことも条件です。データそのものが記録されていない会社では、記録の仕組みづくりから始めます。

基盤を完璧にしてから分析しようとすると、それだけで半年が過ぎます。今あるデータで問いに答え、足りないデータは後から足せば十分でした。

実践2:約180人月の開発を約9人月に

私が取締役CGO(成長戦略の責任者)を務め、グロースドライバーとしても支援しているAIスタートアップの事例です。

見積り約180人月の全面リニューアルを、約9人月・約3.5か月でリリースしました。開発効率は約20倍です。

鍵は、エンジニアでない企画者が、AIで『動く変更案』を直接出せる開発体制にしたことです。何を作るかを決められる人が、そのままAIで形にして確かめられるようにしました。

これが利益につながるのは、浮いたのが作業時間ではなく、見積りどおりなら払うはずだった開発の投資そのものだからです。1段目の効率化と違い、お金の出方が変わっています。

型がなければ、AIは何も増やさない

私が執行役員を務めていた上場の建設テックSaaS企業での営業改革は、AIを使う前の、人の手でやった話です。それでも、AIで利益を出す条件を考えるうえで、いちばんの手がかりになっています。

データ上は足りていた訪問

着手したとき、データ上の訪問件数は足りていました。ところが全国の営業に同行すると、会っている相手が決裁者ではない商談が多くありました。前例どおり、とりあえず訪問する営業が続いていたのです。

この時点でAIを入れていたら、決裁者に会えない訪問を、速く大量にこなしただけだったはずです。

先に型をつくった

先にしたのは、勝てる型をつくることでした。誰に何の価値を届けるかを定め直し、重要な顧客に、他社にない機能をまとめたパッケージを提案する形に変えました。

使われていなかったSFA(営業支援システム)も入れ替え、成約率を正しく測れるようにしました。

新規の受注単価は約3倍になり、営業生産性は前年比160%になりました。

社内に平凡なやり方しかなければ、それを標準化しても、平凡な成果が広がるだけです。

今、同じ改革をするなら、この型をAIに覚えさせ、商談の記録から足りない確認を指摘させます。型があるから、AIに何をさせるかが決まるのです。

AIを利益につなげる4つの手順

経営として決めることを順に並べると、次の4つになります。

  1. 目的を利益の言葉で決める:AIで何ができるかから始めず、どの顧客の売上を増やすか、どの費用を減らすかを決める。手法から入る相談ほど、目的がぶれている。
  2. 判断に使うデータをつなぐ:経営が答えを知りたい問いから逆算し、要るデータだけをAIが読める形にそろえる。数字の定義は一つにする。
  3. 成果が出るやり方を型にする:成果を出している人に、仕事の順番と理由を聞き、1枚にまとめる。売上への影響が大きい業務1つからで十分。
  4. 型を持つ人がAIで再現する:最初に使うのは経営層とエース人材。浮いた時間やお金をどの仕事に回すかまで決めて、初めて利益として見える。

よくある間違い

  • AIで資料を量産する:部下がAIで作った資料の確認に、上司が追われる。確認の手間が増えて負担だけが残った。
  • 指示をAIに打ち込むだけにする:上司の指示をそのまま入力するだけなら、上司が自分でやったほうが早い。
  • 社内の資料をすべてAIに読ませる:受注した提案も失注した提案も混ぜると、平均点の資料しか出てこない。社内検索の仕組みも、使われずに終わりがちだ。
  • 効率化を成果として数える:作業時間が減っても、人も費用も変わらなければ、利益は増えていない。
  • 最初から全社に配る:使い方の支援やセキュリティ対応の手間を考えると、最初は使う人を絞ったほうが成果が出る。

どれにも共通するのは、AIが成果の型をゼロから生み出してくれる、という期待です。AIは、目的と型とデータを持つ会社の利益を大きくします。導入の前に経営が決めることのほうが、ずっと多いのです。

まずは、自社のAI活用が3つの段階のどこで止まっているかを確かめてみてください。

この記事を書いた人

三浦慶介

三浦慶介代表取締役

事業会社で執行役員・責任者として、営業・マーケティング・新規事業の成果を出してきた。

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